チューブトレーニングの効果と方法

チューブトレーニングとは
 チューブトレーニングとは伸縮性に富んだ特殊なゴム製のチューブやバンドを使った運動です。

チューブトレーニングの特徴
伸張する長さと強度が比例する1)
筋肉や関節への負荷が少ない
伸ばす長さや強度によって運動の段階付けができる1,2)
軽くて扱いやすい
鍛えたい部位をピンポイントに鍛えられる
チューブひとつで多様なトレーニングが行える
場所をとらずに行える
不注意による事故が起こりにくく高齢者でも安全に使用できる1)
立位・座位・臥位のどのような姿勢でも使用できる
チューブトレーニングで使用するチューブやバンドの種類
 チューブトレーニングで使用するチューブやバンドにはいくつかの種類があります。自分の筋力や体力、トレーニングの目的に合わせて適したタイプ、強度を選びましょう。

フィットネスバンドは病院や介護施設でのリハビリテーション、集団体操で多く用いられているタイプです。薄くて幅のある一枚の布のような伸縮性に富んだゴム製のバンドで、色別に強度が分かれています。両端を両手で持つ、両端を結んで輪っかにする、二重にして強度を高めるなど、バリエーションに富む使い方ができ、長さも自由に調整できます。握力のない高齢者の場合は、両端に輪っかを作り、手首を通して使うこともできます。

 一本のひも状のゴム製チューブは好きな長さにカットすることができ、二重で使用して強度を高めることも可能です。ゴムの強度の種類があり、比較的安価で手に入りますが、細い形状のため高齢者はやや持ちにくい形状です。一般的には「トレーニングチューブ」の名称で流通しています。

一本のひも状のチューブの両端に持ち手(グリップ)がついていて、握りやすい仕様になっています。八の字になっているタイプもあります。

レーニングチューブが初めから輪っかの形状になっており、両足や両腕に通して使用するタイプです。滑りにくい加工が施されたものもあります。長さを活かした使い方はできないため、目的や行いたい運動が決まっている時に適しています。

チューブトレーニングの目的
 主にトレーニングチューブの伸張性を利用した筋力トレーニングとして筋力・筋持久力の増強や関節可動域・柔軟性の改善を目的として行われます。体幹の安定性・姿勢保持の向上、呼吸機能の増強などにも使用されます1)。

 高齢者のリハビリテーションや集団体操、アスリートのパフォーマンス向上、障害・怪我、COPD、心疾患、糖尿病、腎臓病、高血圧などの疾患に対するリハビリテーションとして、医療、介護、スポーツ、在宅で使用されています1)。

高齢者のチューブトレーニングの効果
 高齢者に集団プログラムとしてチューブトレーニングを3か月間実施した結果、ハイリスク高齢者で、最大歩行速度、最大1歩幅、FRT※1、TUGT※2、膝伸展筋力が優位に向上したという研究報告があります。また、HRQOL※3尺度であるSF-8TMでは、身体機能、全体的健康観、活力、心の健康の有意な改善がみられたと報告されています3)。

※1 FRT(Functional Reach Test):
立位で片手を前に突き出した状態から最大限に手を伸ばした距離を測るテスト。動的な立位バランス能力をみることができる。
※2 TUGT(Timed Up & Go Test):
椅子に座った状態から立って歩き、3m先のコーンを周って再び椅子に座るまでの時間を測るテスト。日常生活機能との関連性が高い歩行能力、下肢筋力、バランス、易転倒性をみることができる。
※3 HRQOL(Health Related Quality of Life:
健康関連QOL):QOL(生活の質)のうち、個人の健康状態に起因し、医療的な介入によって改善可能な項目に限定したもの。
フレイル・サルコペニアへのチューブトレーニングの効果
 上記研究におけるハイリスク高齢者とは、"要介護認定を受けていないものの将来的に要介護となる可能性の高い高齢者"3)であり、今でいう「フレイル」の状態に当てはまります。チューブトレーニングによってフレイルの高齢者の下肢筋力が増強し、HRQOLの改善が認められた3)という結果から、フレイルの改善が期待できます。同研究の結果では、すでに要介護状態にある要介護高齢者ではTUGTやHRQOLの改善はみられておらず、フレイルのうちに積極的に運動を含む対策を行うことが望まれます。

 チューブトレーニングは膝伸展筋力の増強、下肢筋力の向上の結果も得られることから、加齢にともなう筋肉量の減少や筋力低下であるサルコペニアの改善も期待できます。

チューブトレーニングの種類
スクワット(下肢、お尻のトレーニング)

 チューブの真ん中を足で踏み、チューブに少し張りがあるくらいの長さで持ちます。股関節・膝関節を曲げて椅子に座るように重心を落としていったあと、息を吐きながらゆっくりと立位姿勢に戻ります。10×3セット程度繰り返します。

チェストプレス(胸、肩、腕の運動)
 立位または椅子に座った姿勢をとり、チューブを脇の下辺りで背中に回します。左右同じ長さになるように握り、息を吐きながら肘を伸ばしていき、息を吸いながら元に戻します。チューブを前に押し出すときは背中が丸くならないようにします。10×3セット程度繰り返します。

シーテッドロウ(背中、腕のトレーニング)
 床や椅子に座った状態で両足の裏にチューブを通し、腕を伸ばして少し張る位置でチューブを握ります。膝は少し曲げ、肘が身体のうしろにくるまでチューブを引き寄せます。背中はまっすぐに保ち、肩は上がらないようにします。10×3セット程度繰り返します。

膝を伸ばす運動(大腿四頭筋体幹
 椅子に座り、フィットネスバンドを八の字にして両足に通します。フィットネスバンドの抵抗に負けないように片足の膝を伸ばします。もう片方の足も同じようにします(左右各10回)。

足踏み運動(腸腰筋体幹
 椅子に座り、フィットネスバンドを八の字にして両足を通し、太ももの位置まで引き上げます。フィットネスバンドの抵抗に負けないように片足ずつ交互に太ももを上げます(20回)。

チューブトレーニングの注意点
 チューブトレーニングでは次のことに注意しましょう。

チューブはゴム製のため、ゴムアレルギーのある方は注意が必要です。かゆみやショックなどの症状が現れた場合は直ちに使用を中止し、医療機関を受診しましょう。
ゴムチューブは消耗品です。靴を履いたまま踏んだり、指輪、長い爪、金属で傷つけたりしないように注意しましょう。
ゴムチューブは元の長さの3倍以上は伸張しないようにしましょう。
自分に合った強度のトレーニングチューブを選びましょう。
チューブ、セラバンドはしっかりと伸ばして使いましょう。
力を入れる時に息を止めないようにしましょう。「1.2.3.4」と数を数えると良いです。
チューブトレーニングを始める前に
 運動を始める前には検温、血圧測定、脈拍測定を行いましょう。普段から体温、血圧、脈拍はチェックしておき、いつもと変わらないか、自覚症状がないかを確認します。

チューブトレーニングはどこでできるか
 トレーニングチューブやフィットネスバンドなどが1つあればどこででもトレーニングが可能です。チューブトレーニングは地域の体育施設や介護施設などでも実施されています。また、スポーツ用品店や通販サイトなどで市販されているチューブを購入すれば自宅でも取り組むことができます。

 

https://a.r10.to/h6wYfL