アクアエクササイズ(水中運動)の効果と方法

アクアエクササイズは、水の浮力が働き、関節への負荷がかかりにくいため障害や肥満がある方も取り組みやすい運動です。水の抵抗によって負荷量を調整できるため、運動初心者や高齢者でも無理なく運動できます。

アクアエクササイズ(水中運動)とは
 アクアエクササイズは、水温、浮力、水圧、抵抗などの水の特性を利用した水中運動で、ウォーキング、レジスタンスエクササイズ、ダンスなどがあります。

アクアエクササイズの目的
 高齢者に対するアクアエクササイズは次のような目的で行われます。

日常生活動作(ADL※1)の向上および生活の質(QOL※2)の向上
サルコペニア、フレイルの改善
生活習慣病の予防・改善
※1 ADL:
ADL(Activities of Daily Living)とは、日常生活動作のことで、ADLのAはアクティビティー(動作)、DLはデイリーリビング(日常生活)を指します。日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作で、「起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容」動作のことです。

※2 QOLQOL(Quality Of Life:クオリティオブライフ)とは生活の質のことです。超高齢社会に突入した日本では、健康寿命(自立して生活できる時期)を延ばして、生涯にわたって活き活きとした生活が送れるように、高齢者のQOLを高めることが必要とされています。

アクアエクササイズの効果
 アクアエクササイズには次のような効果があります。

全身を使った有酸素運動と水中での抵抗運動で体力・筋力の向上が図られ、全身をバランスよく鍛えることができる
重力からの開放や水の心地良い感覚が味わえ、心身のリラクゼーション、リフレッシュが期待できる
浮力・水温・水圧・水流による血流の改善、自律神経機能の賦活、筋肉の緊張緩和が図られ、筋肉の柔軟性・関節可動域の改善が促されやすい1)
水圧が胸部にかかることで呼吸筋に負荷がかかり、呼吸機能の向上が促される1)
運動後の疲労蓄積が少なく、睡眠の質が高くなる
フレイル・サルコペニアへの効果
 アクアエクササイズは、筋力低下や筋肉量の減少、身体機能の低下がみられるサルコペニア、フレイルの予防・改善の運動として適応があります。水の中で行うウォーキングは陸上で行うジョギングと同等の運動量があり、上半身・下半身の両方の強化を行うことができます。

アクアエクササイズの注意点
 水中では体温の上昇や発汗を感じにくいですが、陸上での運動と同様に発汗し、身体の水分は失われるため、プールサイドに水分を置いてこまめに摂取します。水中での動きに慣れないうちは疲れが出やすくなるため、運動前後にウォーミングアップとストレッチを十分に行いましょう。

アクアエクササイズの種類と方法
 ウォーキング(5分)、レジスタンスエクササイズ(10分)、ダンス(5分)を組み合わせたプログラムの前後にウォーミングアップ(5分)、クールダウン(5分)を入れた30分程度のエクササイズを週に2回程度継続することがおすすめです。

ウォーミングアップ(5分)
 ウォーミングアップは運動に適した状態に身体の機能を高め、安全に運動が行えるように準備します。プールサイドで関節を大きく動かすようなストレッチや体操を行い、水中で身体を水に慣らしながら徐々に心拍数を上げ、筋温を上昇させます。抵抗が小さく強度の低い運動からはじめ、負荷量・運動強度を上げていきます。

ウォーキング(5分)
前歩き
 背筋を反らしすぎないように注意してまっすぐに伸ばし、やや前傾姿勢をとります。膝は高く上げるように意識し、足の裏全体で踏みしめて前へ進みます。肘は軽く曲げて大きく振ります。

後ろ歩き
 大股で足の裏でしっかりプールの床を押さえるようにして後ろ向きに歩きます。腕は前後に振るか前に伸ばしてバランスをとりやすいようにします。

横歩き
 背筋を伸ばし、つま先を少し外側に向けて膝を曲げながら足を横に開きます。もう一方の足は太ももの内側から引き寄せて足を閉じます。腕は足に合わせて横に開き、足を閉じた時は腕も下ろします。

レジスタンスエクササイズ(10分)

スクワット
 肩幅より広く足幅を開き、両肘は曲げて肩の高さで開いて膝の屈伸を行います。膝を曲げたときには脇を閉めて肘を下ろします。次に踵を上げながら膝を伸ばし、肘を肩の高さまで開きます。(10回)

カーフレイズ
 足を肩幅に開き、足の指の付け根に体重を乗せてお腹から引き上げるように踵を上げて下ろします。次に背中とお尻をまっすぐに保ちながら両足のつま先を上げます。(10回)

股関節回し・レッグレイズ
 片方の膝を曲げて股関節を大きく外回し(10回)、うち回し(10回)します。次に膝を伸ばしたまま足を前に伸ばす(10回)、横に上げます(10回)。左右の足を入れ替えて同じように行います。

ダンス(5分)
 音楽に合わせて一定のリズムで動き続けることでさまざまな動きを楽しみながら全身の筋肉を鍛えることができます。

クールダウン(5分)
 急に運動をやめると、筋肉が収縮することによって心臓に戻ってきていた血液が筋肉から返ってこなくなり、貧血状態となってめまい・吐き気・失神などが起こります。運動中に産生された乳酸も滞って疲労の原因となります。

 これらを予防するために、クールダウンをしっかりと行い、水中で肩や胸、太もも、ふくらはぎなどの主要な筋肉を大きくゆっくりと伸ばしながら全身の血液循環を促します。緊張が高まった状態からリラクゼーションが図られ、筋肉の柔軟性が促されて運動後の筋肉痛が軽減します。

 プールから上がるときは階段を利用してゆっくりと上がりましょう。

アクアエクササイズを始める前に
 普段から体温・脈拍・血圧・体調の変化をチェックし、運動前には体調を確認しましょう。「いつもと違う」「体調がおかしい」と感じたら無理はせずに中止にしましょう。