タンパク質はなぜ大切?不足&摂りすぎるとどうなる?たんぱく質が多い食べ物と効果的なとり方

 筋肉を育てる材料として、たんぱく質は筋トレ民にとってもっとも大切な栄養素のひとつです。たんぱく質とは、どんな栄養素なのでしょうか。

 今回は、たんぱく質とは何か、どんな働きをするのか、種類(動物性・植物性)と特徴、たんぱく質が多い食品・食材といった「たんぱく質の基礎知識」について。

今さら聞けない!? そもそも「たんぱく質」とは

たんぱく質とは、ヒトの生命維持や身体活動に欠かせない「脂質」「糖質」と並ぶ3大栄養素のひとつです。血液や筋肉、骨や臓器、皮膚、髪、爪などカラダを形成する主要な成分で、体重の1/5を占めています。体内のホルモンや酵素、免疫物質などを作り、栄養素の運搬を行ない、微量のエネルギー源にもなっています。

 たんぱく質は多くのアミノ酸の結合によって作られ、すべてのたんぱく質は20種類のアミノ酸が結合してできています。体内のたんぱく質の一部は常に分解され、毎日の食事で補給される新たなたんぱく質と合わせて日々生まれ変わっています。

 アミノ酸の中には、体内で生成することのできない9種類の必須アミノ酸(成人ではイソロイシン、ロイシン、トリプトファン、リジン、メチオニンフェニルアラニンヒスチジンスレオニン、バリンで子どもはこれにアルギニンを加えた10種類)があり、食事から摂取しなければなりません。

 必須アミノ酸の中でも筋肉に関係の深いアミノ酸は「イソロイシン」「ロイシン」「バリン」で、これらを総称してBCAA(分岐鎖アミノ酸筋)と呼び、筋肉でエネルギーとなります。

さて、筋トレ民はとくに意識してたんぱく質を摂取していることと思いますが、ここで気になるのはたんぱく質の摂り過ぎや不足した場合。

 1日のエネルギーの35%(通常は12~15%)程度のたんぱく質摂取量であれば、健康に大きな弊害が出るといったことは現段階ではないだろうとされています。

 一方、不足した場合はカラダの中でそのほかの栄養素からたんぱく質を合成したり、分解したたんぱく質を再利用することもできるため、すぐに症状として何かが現れることはありませんがカラダにとってよい状況とはいえないとのこと。

「慢性的にたんぱく質が欠乏、とくにエネルギーも同時に不足した場合は筋肉量低下のほか、爪や骨が弱くなる、免疫が下がるなど肉体的にも機能的にも弊害が起こります」(河村さん)

 一般に筋トレをしている場合は、そのエネルギー消費量に見合う分、食事の摂取量も増えます。したがって通常はそれに伴ってたんぱく質の摂取量も増えるため、たんぱく質不足に陥ることはありません。加えてカラダの中で分解されたたんぱく質の再利用効率が上がることも分かっています。

 ただし、減量中の筋トレなど、エネルギー摂取量を抑えて筋トレを行なっている場合には不足する可能性も考えられるので注意が必要です。

たんぱく質の機能と必要量
 たんぱく質アミノ酸に分解・吸収され、カラダに必要なたんぱく質に再合成されます。体内のさまざまなたんぱく質はそれぞれ異なる役割を持ち、ヒトの生命と身体活動を支えています。

たんぱく質の機能
酵素やホルモンとして代謝やカラダの機能調節
ヘモグロビンやトランスフェリンなど物質輸送の関与
γ-グロブリンなど免疫への関与
アクチンやミオシンなどでカラダを構成
身体活動のエネルギー源
タンパク質は1日どれくらい摂ればいい?
 たんぱく質の必要量は性別や年齢、体重によって異なり、トレーニングの有無や強度によっても異なります。

 1食あたりのたんぱく質摂取量の目安は20~30g(たんぱく質量)、1日に必要なたんぱく質摂取量は、フィットネスなど軽い運動をしている人で体重1kgあたり1.2~1.6gが目安となります。強度の筋トレに励む筋トレ民は体重1kgあたり1.6~2.0gを目安にするとよいでしょう。

たんぱく質の種類と特徴

たんぱく質は大きく「動物性たんぱく質」と「植物性たんぱく質」の2つに分けることができます。

動物性たんぱく質

肉類、魚介類、卵、乳製品などの動物由来のたんぱく質

植物性たんぱく質
米、小麦、大豆などの穀物類、野菜や果物など植物由来のたんぱく質

 たんぱく質は多くのアミノ酸の結合で作られていると先に述べましたが、たんぱく質の働きは不足する必須アミノ酸のレベルに制限されます。また、カラダへの吸収率も平均すると動物性たんぱく質97%に対し、植物性たんぱく質は84%となっています。

 食品中の必須アミノ酸の含有バランスを評価する指標を「アミノ酸スコア」といいますが、アミノ酸スコアは100に近いほど良質なたんぱく質を含む食品となります。アミノ酸スコア100の食品には大豆、牛肉、豚肉、鶏肉、アジ、サケ、鶏卵、牛乳などがあります。

 この動物性たんぱく質と植物性たんぱく質、筋トレ民がバルクアップを目指す際にどちらを多く摂取すれば効果的といったことはあるのでしょうか。

たんぱく質の質は、その食品に含まれる必須アミノ酸がいかにバランスよく含まれているかどうかによって決定します。良質のたんぱく質とは、9種類の必須アミノ酸がバランスよく含まれたものをいいます。

 多くの動物性たんぱく質はバランスよく必須アミノ酸を含むという特徴があり、無駄なく体内で利用することができます。一方、植物性たんぱく質の多くはそのバランスが悪く、たんぱく質としての質は低いものが多いのだそうです。

たんぱく質という部分にだけ目を向ければ、食品100gあたりに含まれるタンパク質量は植物性食品よりも肉や魚(動物性)の方が多く、質がよい場合が多いです。そのため、動物性食品といえるでしょう」(河村さん)

 ですが、たんぱく質を摂りたいからと、肉ばかり食べていればよいというわけでもないようです。

「食品に含まれる脂質の質にも目を向けると、やはり動物性、とくに肉や乳製品は飽和脂肪酸が多くなり、これは血管の詰まりなどにつながることもあります。したがってそれらに偏らず、魚や大豆製品も取り入れるのが健康なカラダを維持しつつ、必要なたんぱく質を確保するポイントです」(河村さん)

 単体ではアミノ酸スコアが100でない食品でも組み合わせることで100になるので、アミノ酸スコアに神経質になるよりもいろいろな食品を組み合わせて摂取する(アミノ酸の補足効果)ことが大事とのことでした。

 次に、たんぱく質が多い食品類とおすすめ食材です。

たんぱく質が多い食品類とおすすめ食品

たんぱく質の含有量が多い食品類には、「肉類」「魚介類」「卵類」「大豆製品」「乳製品」があげられます。

 以下は1食あたりのたんぱく質含有量の多いおすすめ食品に、おやつを加えた23品です。食品選びにご活用ください。

食品の種類
食品名
1食あたりの量
重量(g)
たんぱく質(g)
肉類
輸入牛・ヒレ
 
80
16.4
豚もも肉・赤身
 
80
17.5
もも(皮なし)
 
80
15.2
鶏レバー
 
80
11.6
ロースハム
2枚
20
3.3
魚類
アジの開き
開き1枚
80
16.2
銀鮭
切り身 大1切れ
80
15.7
まだら
切り身 大1切れ
80
14.1
するめいか
切り身 大1切れ
80
14.3
めばちまぐろ・赤身
刺身6切れ
80
18.2

鶏卵
1個
50
6.2
乳製品
低脂肪乳
コップ1杯
200
7.6
ギリシャヨーグルト
1個
100
10.0
プロセスチーズ
1個
18
4.1
カテージチーズ
大さじ2
20
2.7
大豆製品
絹ごし豆腐
1人分
150
7.4
納豆
1パック
45
7.4
ゆで大豆
 
45
6.7
調整豆乳
コップ1杯
200
6.4
おやつ
あたりめ
1袋
16
11.1
ビーフジャーキー(牛)
1袋
45
24.7
焼き竹輪
2本
50
6.1
プロテインバー
1個
 
10~20

 

 最後に、筋トレ民におすすめの効率的なたんぱく質摂取のポイントを3つあげていただきました。ぜひ、参考にしてみてください!

1.自分に必要なたんぱく質量を算出する
2.3~4時間おきに、それを極力均等に摂取する(朝、昼、晩に20~30gずつ、間食に10~20gを2、3回程度が現実的)
3.筋トレ時のエネルギー源になる糖質をカットしすぎないことで、たんぱく質を有効に利用できるようにする