きちんとした「大人」であるために大切なこと

大人とは、「年を重ねたら自動的になるもの」でもない。

そういう意味では、世間から見ればもう十分にいい年なのに、いつまでも大人になり切れない人も多い。世間を騒がせるような低レベルな事件を見るにつけ、これほどに1人の人間として成熟できていない人が多いのかと愕然とすることがある。

大人とは、他人に面倒をかけることなく、「自分の言動に責任を持ち、自分で自分の始末をつけられる」人のことのはずだ。そして、大切なのはそれだけではない。

いくら大人として成熟しているといっても、世の中に貢献しようとせず、単に「逃げる」姿勢だけを見せている人は尊敬されない。自分の持っている知識だけで若い世代にマウントしようとしたり、新しいことに対して文句やグチばかり言っているようでは、単なる「老害」としか見なされないようになる。

いつも1人の大人であるとの自覚を持ち、自分が果たすべき責任を意識しておくことは大切だ。社会に対して、何かしら自分ができることは必ずあるはず。

目の前の課題に正しく向き合い、できることを使命として提供しつつ、自分自身も必要に応じて変化していく— そのような人こそ、1人前の大人といえるだろう。

「人から尊敬され、自分なりの価値を発揮しつづける大人」について、もう少し具体的に考えていこう。

 

「他責」 ではなく、いつも 「自責」 という意識で
いつも人の批判しかしない人は、自分の役割や責任を棚に上げてしまっていることが多い。自分から積極的に責任を取ろうとせず、安全地帯から、評論家的に意見することだけを自分の役割だと思っている。

そういう人は、本当の仕事の難しさを理解していないがために、いとも簡単に人を批判することができてしまう。

逆に、責任意識の強い人ほど、仕事の本当の難しさを理解している。かかわるすべての人を満足させながら、安定的に価値を出しつづけることは本当に至難の技だ。

だから簡単に人を批判し、責任を追求するようなことはしない。逆に、何か身近な課題が起こったときは、まずは自分の責任ということを考える。人に言われたからではなく、あくまで自主的な判断においてだ。

だからこそ、仕事や身のまわりの課題の解決に向けて、自分から積極的に動くことができる。いつも課題に真摯に向き合おうとするし、そのぶん解決するのが速いので、まわりからは自然と頼られる存在になる。

非難されることを恐れず、自分の責任範囲を広く持とうとするから、人からまかされる範囲も広くなる。こういう人こそが、真のリーダーだ。

言い換えれば、使命感と責任感に満ちた、尊敬すべき大人だともいえる。

 

失敗を恐れず挑戦する
大人になることは成熟することではあるが、それは決して、守りに入ってしまうことではない。

いくら経験を積んだからといって、それ以上に成長や変化をしようとせず、これまでの資産や蓄積だけに頼って生きようとした瞬間から「余生」が始まる。

年齢にかかわらず、余生モードに入ってしまっている人はかなり多い。若い世代から「逃げ切り」と言われ、尊敬されないのはまさにこういう人びとのことだ。

自分の得た経験やスキル、資産を、自分のためだけに使って生きていこうという姿勢は残念だ。虚栄心の強い人は、高級車や豪華な旅行、自分のこれまでの人脈や肩書を見せびらかして尊敬を集めようとするけれど、それは本当に尊敬に値する行動だろうか?

そうではなく、自分の知見を社会のために還元したり、そのために新しいプロジェクト(仕事でもプライベートでも)を始めたりすることこそ本当に価値がある。

たとえ無謀だとか絵空事だと揶揄されようが、挑戦を続ける人たちこそが、若い世代への真のロールモデルになる。

人は、「過去の実績」よりも、「今の姿勢」で評価されるものだ。

 

上から目線ではなく、あくまでフラットに
また、年を重ねたり経験が増えたりすると、どうしても上から目線になってしまう人びとがいる。もともと日本には年功序列的な文化が根強く残っていることもあり、経験者になればなるほど、「自分は尊敬されるべき」と考え、なぜか偉そうになってしまうのだ。

多くの人に尊敬される人は、一様に、謙虚な人々だ。偉そうなワンマン社長が尊敬を集めているように見えていても、それは単に、周囲が逆らわず、社長を立てるフリをしているだけだ。

真の尊敬ではなく、圧力による縛り。そんなやり方で、「自分は偉い」と思っている人びとがどれだけ多いことか。いくら成功しようとも、有名になろうとも、謙虚でフラットな姿勢を持ちつづけることはとても大切だ。

そういう人が信頼されるし、まわりから「きちんとした大人」であると見なされる。そして、人に恵まれた、より良い人生を送ることになるのだ。

 

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この記事は、アースメディア代表 松本 淳 著 『リクルートに会社を売った男が教える仕事で伸びる50のルール』(フォレスト出版)からの一部抜粋です。