無意識のうちに「奪う人」にならないように注意する

人と人との関係性においては、「ギブが先で、テイクはそのあと」などといわれる。これはまさにその通りだろう。

「他人から何かを得てやろう」としか考えない人からは、いずれ人が離れていく。まずは他者に何が与えられるか、どんな貢献ができるかを先に考えることは、人としてとても大切なことだと思う。

ここで特に気をつけたいのは、「明確に意識していないが、知らないうちに人からテイクをしていないか」についてだ。普通、多くの人は「ギブしなければ」というほうに注目することだろう。

ギブはわかりやすい。自分のできることを、できる限り積極的に提供していくだけだ。

しかしテイクには、明確に何かを要求するだけではなく、「自分でも気づかないうちに人から奪っている」ことも含まれる。これに気をつけておかないと、知らない間に人間関係を悪化させることもあるのだ。

 

教えてもらったアイデアを、勝手に自分のものにすること
人のアイデアを使わせてもらうときは、十分に注意しなければならない。

確かに、「すでにあるものを徹底的にコピーする姿勢が大切」という言葉はある。世の中には完全にオリジナルなものなどなく、新しく作られるものは、すべて過去の蓄積を参照しているという考えだ。

だから、「マネる」ことから始めようと。 しかし、「コピーされる側」から見た場合はどうだろうか?

たとえば、有名な人の考えや人気商品なのであれば、それが素晴らしいものであればあるほど、多くの人に「参考」 にされるのはある種の宿命といえるかもしれない。

しかし問題は、ごく近しい人に直接教えてもらったようなアイデアやノウハウの場合だ。それらの内容を、あたかも自分のオリジナルのように吹聴する人というのは実際にいる。

近しい関係の中でのノウハウの共有や交換というのは非常に大切だ。それこそが、自分の所属する組織やネットワーク、コミュニティから得られる価値だといえる。

しかし、何かを人から教えてもらったのであれば、きちんとその相手に敬意と感謝の意を示すべきだろう。そのアイデアやノウハウをほかの人へさらに展開する場合は、当然ながら本人の許諾を得なければならないし、その結果もきちんと報告すべきだ。誠意を尽くせば、快く許可してくれるケースもある。

しかしこれを怠り、あたかも自分のオリジナルのように勝手に使う人には、もう二度と何かを教えようという気にはならない。

 

人の時間を奪うこと
人のものを奪っていることに気づきにくいのは、「時間」だ。

たとえば、いつも遅刻してくる人。たとえ数分とはいえ、人に待たされる間の数分はとても長い。待っている間、「この時間があれば、ほかのことができたのに」と腹立たしく思っているかもしれない。

時間はお金以上に貴重なものだと考えれば、時間泥棒は、まさに重大な罪だ。また、一緒にプロジェクトを進めていく中で、いつもレスポンスが遅く、ほかのメンバーを待たせてしまう人。

その人がいつまでもボールを持ちつづけることにより、プロジェクトの進捗が遅れてしまう。そしてそれは、まわりのメンバーからすると、「自分の時間を奪われる」ことに直結するのだ。

レスポンスまでの待ち時間がムダになるし、もしそれでプロジェクトの進捗が遅れると、自分のスケジュールも変更する必要が出て来る。

無責任な怠慢が、人の時間を奪う結果になることは多い。そして、自分が思っている以上に、人からは恨まれているものだ。

 

人の信用を奪ってしまうこと
人の悪口を言わないほうがいいことは、多くの人が理解している。だから、たとえひどい目にあって悪口を言いたくなっても、「ガマンしておこう」となる。

しかし問題は、自分が体験した「一次情報」ではなく、人から聞いた話などの「二次情報」の場合だ。「あの人は○○らしいよ」という、誰かから聞いた悪口を、無責任に広めてしまったことはないだろうか?

二次情報は、自分起点の悪口よりも、広めることに抵抗感や罪悪感も少ない。だから、人から聞いたことは、ネタとしてつい人に話してしまいがちだ。

しかし、人から聞いたウワサ話というのは、自分ではその真偽はわからない。

なのにそれを無責任に広めてしまうことは、無実かもしれない「当人の信用」を、大きく損なう行為なのかもしれないのだ。自分がウワサ話を広めていたということが、当人の耳に入ることもある。

その場合、「信用を奪った人間」として、その人からはものすごく恨まれることになるだろう。特に考えなしにやってしまった行為としては、その代償は大きい。

他人から実際に何かをもらうことだけがテイクではない。「無意識のテイク」によって人から大事なものを奪っていないかを、いつも注意しておきたいものだ。

 

 

この記事は、アースメディア代表 松本 淳 著 『リクルートに会社を売った男が教える仕事で伸びる50のルール』(フォレスト出版)からの一部抜粋です。