NISAって、どんな制度?

ここ数年、個人投資が注目されています。個人の金融資産を「貯蓄」から「投資」に向けさせ、世の中のお金の流れを良くしたい国の政策が背景にありますが、そうした投資を促すために設けられた仕組みが「NISA」(少額投資非課税制度)です。「聞いたことはあるけど、どんな制度なの?」。そんな疑問を持つ方に、内容を解説します。

NISAとは、証券会社などに開設した専用のNISA口座内で買った株式や投資信託などから得られる利益に税金がかからなくなる制度です。

 年間の投資額に上限はありますが、通常、株式などを売った利益や配当金には約20%の税金がかかりますので、お得な制度といえます。

 イギリスのISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)をモデルにした「日本版ISA」として、NISA(Nippon Individual Savings Account)と呼ばれています。

 国が国民に投資を呼び掛けるのは、日本では、約2000兆円に上る家計の金融資産の約半分を現金や預貯金が占めているため、個人資産がなかなか増えないことが理由です。

国は、このお金を投資に向けることで個人の金融資産を増やし、買い物や旅行などに使ってもらって「景気を良くしたい」と考えているのです。

 また、少子高齢化が進むことにより年金の支給額は目減りしていくことが見込まれるため、「老後に備える」という意味でも個人で資産を増やすことが大切だとされています。

 NISAには、成人が利用できる「一般NISA」と「つみたてNISA」、未成年が利用できる「ジュニアNISA」の3種類があります。

 2022年4月の成人年齢引き下げにより、23年以降に開設される一般NISA、つみたてNISAは18歳以上が対象となります。23年中に開設されるジュニアNISAは18歳未満が対象ですが、口座の管理は2親等以内の保護者がするものと定められています。

一般NISAは株式や投資信託などを年間120万円まで、一括または積み立てで購入でき、最大5年間、非課税で保有できます。

 つみたてNISAは、金融庁の基準を満たした投資信託を年間40万円まで、積み立てで購入でき、最大20年間、非課税で保有できます。対象商品は長期・分散投資に適したもの、信託報酬などの手数料が少なくリスクの低いものに限られます。

 ジュニアNISAは、株式や投資信託などを年間80万円まで、一括または積み立てで購入でき、最大5年間、非課税で保有できます。ただし、20年度の制度改正で24年以降は新規の口座開設ができなくなりました。

 一般NISAとつみたてNISAは、どちらか一方のみ、1人1口座しか開設できません(年ごとに選択可能)が、一般NISAやつみたてNISAを利用する人が子や孫のジュニアNISAを管理することはできます。例えば、父母と未成年の子どもが2人いる家庭では、最大で四つのNISA口座を開設できます。

 20年度の制度改正により、一般NISAの投資方法は24年以降、原則として積み立て投資を条件とする2階建ての制度に変わりました。

1階部分で年間20万円までの積み立て投資をすれば、別枠の2階部分を使って、一括または積み立てでさらに年間102万円までの非課税投資ができる仕組みです。2階部分で購入できる商品は、従来の一般NISAの対象商品からリスクの高い商品を除いたものです。

 23年以前に株などの投資経験があるか、NISA口座を利用していた人は、1階部分の積み立て投資を行わなくても2階部分の利用ができます。その場合は株式のみが対象となります。

 口座を新規開設できる期間は、一般NISAは23年末までが28年末までに、つみたてNISAは37年末までが42年末までに延長されました。

一般的には、次のように言われています。

つみたてNISAに向いているタイプ
・少額からとりあえず投資を始めてみたい人
・10年後、20年後のためのお金を準備したい人
・商品を選ぶ自信がなく、できるだけ、ほったらかしにしたい人
一般NISAに向いているタイプ
・資金に余裕があり、まとまった金額で投資したい人
・投資の知識があり、自分で商品を選びたい人
・株価チェックが好きな人

 コラムニストでファイナンシャルプランナーの西山美紀さんは「投資におけるリスク回避の原則は『長期・積み立て・分散』だと言われています。自分で株価をチェックしたり売買したりする必要がないという点で、積み立ての投資信託に限った、つみたてNISAが初心者向きです」とアドバイスしています。

 投資信託は、投資のプロに運用を任せるので、どの株を買うか、いつ売り買いするかといった判断を自分でしなくてよい半面、運用してもらうための手数料がかかります。

 つみたてNISAで購入できるのは、金融庁が「長期・積み立て・分散投資」に適していると認めた投資信託で、手数料が低めの商品に限られています。積み立て投資の最低金額は100円から設定されている(金融機関によって異なる)ため、「とりあえず投資を始めてみたい」という人にとってはハードルが低くなっています。

つみたてNISAは他の金融商品に比べてリスクが低いといえますが、「投資である以上、銀行預金のように元本保証はありません。決してリスクがないわけではないので注意が必要です」と強調します。

投資で利益を出すには「安い時に買い、高い時に売る」ことが鉄則ですが、プロでもそのタイミングを正確につかむのは難しいものです。