インターバル速歩の効果

インターバル速歩とは
 インターバル速歩とは「さっさか歩き」と「ゆっくり歩き」を数分間ずつ交互に繰り返すウォーキング法です。

 インターバル速歩は、信州大学大学院特任教授であり、NPO法人熟年体育大学リサーチセンター副理事(2020年10月時点)の能勢博先生によって科学的根拠に基づき提唱されており、各個人の筋力や体力に合った適度な強さで運動すること2)ができます。

インターバル速歩が開発された経緯と目的
 1997年に長野県松本市で「中高年のための健康スポーツ教室」事業として「1日1万歩のウォーキング」プログラムが開始されましたが、1年間で1日1万歩を継続できた人は全体の30%で、生活習慣病の予防・改善効果はみられるものの体力の向上は認められませんでした。

 歩行速度と持久力の向上のためには太ももの筋力増強が必要ですが、筋力増強はウォーキングでは促されなかったため、ウォーキングに加えて週1回のマシンを使用した筋力トレーニングや持久性トレーニングが実施されました。

 その結果、プログラムを継続できた人は全体の80%に増加し、太ももの筋力が20%増加、最大歩行速度が10~20%向上という結果が得られ、筋力・筋持久力の向上には、マシントレーニングをウォーキングに加えて行うことが有効であることが示されました。

 しかし、マシントレーニングは施設や指導スタッフの整備が必要なため、「誰でもどこでも簡単に継続できる運動」として考え出されたのがインターバル速歩です。

インターバル速歩の健康効果について
 インターバル速歩では次の効果が得られます。

体力の向上(筋力の向上・持久力の向上):筋力が10%、持久力が最大20%向上
生活習慣病の改善:低体力の群で高血圧、高血糖、肥満などの生活習慣病指標※1の点数の値が20%改善
気分障害の改善:うつ指標※2の値が50%改善
睡眠の質の改善:睡眠効率(睡眠時間/寝床に入っている時間)が改善
認知機能の改善:浦上式認知機能テストをPC用にアレンジしたプログラムによる認知機能測定の値が4%向上。とくに軽度認知障害(MCI)の人たちでは認知機能測定の値が34%改善
関節痛の改善:膝関節痛の症状が、50%の人が良くなったと回答
骨粗しょう症の改善:骨密度が第2-4腰椎で0.9%、大腿骨頭部で1.0%増加
熱中症の予防:インターバル速歩後に糖質・乳タンパクを摂取すると、体温上昇に対する皮膚血管の拡張度、発汗速度が3倍亢進
※1 生活習慣病指標:
最高血圧≧130㎜Hgまたは最低血圧≧85㎜Hg、②空腹時血糖≧100㎎/㎗、③BMI≧25㎏/㎡、④中性脂肪≧150㎎/㎗またはHDLコレステロール≦40㎎/㎗の4項目について、該当する場合に1点加算し、したがって4項目すべて該当する場合は4点満点とした診断基準。
※2 うつ指標:
インターバル速度を行うことによる精神的・心理的評価についてはCES-D(うつ病自己評価尺度:The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale)を用いた。CES-Dは全20項目(16のネガティブ項目(symptom-present):うつ気分・身体症状・対人関係、4ポジティブ(symptom-absent)項目:ポジティブ気分)で構成されている。
フレイル・サルコペニアへのインターバル速歩の効果
 加齢による筋肉量の減少、筋力低下がみられるサルコペニアは活動力の低下、体力の低下を引き起こし、フレイルの要因となります。

 股関節人工骨頭全置換術後の患者がインターバル速歩を12週間継続すると、下肢筋力、最高酸素摂取量、換気閾値が大幅に向上した7)という研究報告があり、身体機能が低下し、筋肉が萎縮している術後の状態でも、インターバル速歩トレーニングを続ければ、筋力、体力の改善がみられます。

 この結果から、在宅でも取り組むことのできるインターバル速歩は、サルコペニアやフレイルの予防・改善を図るトレーニングとして期待されます。

インターバル速歩のやり方
 インターバル速歩は以下の方法で実施します。

1:視線は約25m先を見て背筋を伸ばした姿勢を保ちます。

2:足はできるだけ大股を意識して踏み出し、踵から着地します。初めは1.2.3と数えて3歩目を大きく踏み出すようにします。肘は90度に曲げて腕を前後に大きく振ります。

3:速歩のスピードは「ややきつい」と感じる程度で行います。

4:3分間の「速歩(さっさか歩き)と3分間のゆっくり歩きを1セットとし、1日5セット以上、週4日以上を目標にします。
 1日の早歩きの合計が15分になればよいので、朝・昼・夜とこまめに分けて実施しても大丈夫です。1週間で早歩きを60分以上、5か月間続けることを目標とするため、平日に時間がとれない場合は土曜日に早歩き30分、日曜日に早歩き30分を行ってもよいとされます。

インターバル速歩の注意点
 インターバル速歩を行う際の注意点を示します。

「さっさか歩き(早歩き)」の時は転び易いため、足元に充分注意し、無理をせずに、足がもつれない程度の速度で実施して下さい。
心臓や肺の病気がある人や、脳卒中パーキンソン病水頭症などの診断を受けたことがある人は、インターバルトレーニングを実施しても良いか、かかりつけ医と相談してください。
インターバル速歩を始める前後にストレッチを行い、怪我や疲労を予防します。とくに下半身のストレッチをしっかり行い、筋肉を柔らかくします。午後3時から午後6時頃は筋肉が柔らかくなっていて肉離れなどの怪我が起こりくい時間とされています。
前屈みにならないように胸を張った姿勢を保ち、正しいフォームで歩くようにします。
服装は軽い運動ができる程度のもの、シューズは底がやわらかく、曲がりやすいもので、踵にクッション性があるものを選びましょう。

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