ファンクショナルトレーニング

ファンクショナルトレーニングとは
 ファンクショナルトレーニングの専門家であるVern GambettaとGary Grayは「特定の筋のみを強化する単関節運動はとても機能的とはいえない。それに対し、多くの筋群を動作パターンに統合していく多関節運動は機能的である。」と述べています。また、ストレングス&コンディショニング分野のリーダー的存在であるMichael Boyleは「ファンクショナルトレーニングは"動き"のトレーニングであり、"筋"の強化ではない」としています。

 リハビリテーションやトレーニングにおいて、問題のある部分や一つの筋のみにアプローチをするのではなく、怪我の予防、パフォーマンスの向上を図るためにファンクショナル(機能的)な動作の習得とトレーニングの実施が必要であるという考え方がファンクショナルトレーニングです。

ファンクショナルトレーニングの5原則
 ファンクショナルトレーニングの定義として以下の5原則が挙げられています。

1:重力(gravity)を利用する
2:分離(dissociate)と協同(integrate)
3:キネティックチェーン(kinetic chain)
4:3面運動(3dimension movement pattern)
5:力の吸収(loading)と力の発揮(unloading)
重力を利用するとは
 人は常に重力下で動作を行っています。ファンクショナルトレーニングでは常に重力に抵抗した動作を意識して取り入れていくことが必要です。

分離と協同とは
 身体が機能的な動作を行うためには身体の各関節が「動き」と「固定」の役割を分担して持ち、動作時にはそれぞれの役割を協同して行う必要があります。例えば、足をあげるときには股関節が大きく動き、腰椎は固定に働きます。股関節の動きが十分でなければ腰椎に負担がかかり、腰椎の固定が不安定であれば股関節の十分な動きも得られません。関節ごとに「動き」と「固定」の役割を持って協同して働くという考えを用いたアプローチは「ジョイント・バイ・ジョイントアプローチとは」のページで詳しく説明しています。

キネティックチェーンとは
 キネティックチェーンとは運動連鎖とも呼ばれます。動作は一つの筋の働きだけで起こっているのではなく、たくさんの筋肉が連動して働くことによって起こっています。筋肉に限らず、身体のアライメントや神経系の働き、心肺機能や代謝など全身の機能が協調して働くことで機能的な動作が生まれるので全身運動を行うことが大切です。

3面運動とは
 3面運動の3面とは矢状面、前額面、水平面のことです。矢状面は前後の動き、前額面は左右の動き、水平面は回旋の動きを指します。動作は前後・左右・回旋すべての動作で構成されているので、トレーニングでも3面の動きを考える必要があります。

力の吸収と力の発揮とは
 動作時に力を発揮する前には力を吸収する動作が行われます。例えば、ジャンプ動作では飛び上がる前に、無意識に軽くしゃがみ込んでからジャンプします。このように力を発揮する(筋肉の収縮)前には筋肉を伸ばしてから動作を行っているので、トレーニングでも力の発揮と吸収の動きを取り入れる必要があります。 

ファンクショナルトレーニングは、一つの筋肉に対する筋力トレーニングではなく、5つの原則が相互に作用するトレーニングであり、すべての「動作」の基本となる機能的な動きを身につけるためのトレーニングです。

ファンクショナルトレーニングの効果
 ファンクショナルトレーニングはすべての動きの基本となるので、スポーツ選手の競技パフォーマンス向上や怪我の予防だけでなく、以下の効果が期待できます。

姿勢のゆがみの改善
怪我の予防
肩こりや腰痛の予防
体幹を使った効率の良い動作が行える
シェイプアップ効果
 機能的な動きを身につけることで身体のバランスが整い、姿勢のゆがみを改善することができます。姿勢のゆがみが改善され、機能的な動作が行えるようになると、関節や筋肉へかかる負担が軽減され、怪我の予防になります。全身の血流もよくなり、肩こりや腰痛も起こりにくくなります。体幹を使って姿勢や動作を行い、安定性が増すと身体を効率的に使うことができます。効率的な動作では、動作に必要な筋肉が使われるのでお腹周りやお尻も引き締まり、シェイプアップも期待できます。

ファンクショナルトレーニングの方法
 ファンクショナルトレーニングは以下の流れで進められます。

アセスメント・姿勢・動作の修正
アクティブストレッチ
コアトレーニン
バランストレーニン
ストレングストレーニン
ストレッチ
アセスメント・姿勢・動作の修正
 機能的な動作を身につけるためには、まずはアセスメントにより自分の姿勢や動作の癖を知り、正しい姿勢・動きへと修正することが必要です。立位やオーバーヘッドスクワット(両手を上にあげて行うスクワット)などで姿勢や動作のチェックを行っていきます。

アクティブストレッチ
 トレーニングの前にストレッチを行い、関節の可動域を拡げて動きやすい身体をつくっていきます。

コアトレーニン
 コアトレーニングにより、体幹の筋肉を鍛え、肩関節や股関節などの動きに適した関節の可動性を促す体幹の安定性をつくっていきます。フロントブリッジやシングルレッグブリッジなどを行います。

バランストレーニン
 不安定な姿勢でも肩関節や股関節などを動かしていけるようにバランス力を鍛えていきます。シングルレッグ(片足立ち)などを行います。

ストレングストレーニン
 最後に立位で実際の動作に近い動きのトレーニングを行います。プッシュアップ(腕立てふせ)やスクワットなどを行います。

ストレッチ
 トレーニング後はストレッチを行い、筋肉を緩めて傷ついた筋肉の修復を促します。

 

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