カリウムの働きと1日の摂取量

カリウムとは
 カリウムは成人の体内に約200g含まれています。大部分は細胞内に存在し、細胞外液に多いナトリウムと相互に作用しながら、細胞の浸透圧を維持したり、水分を保持したりするのに重要な役割を果たしています。

カリウムの吸収と働きと効果1)
 摂取されたカリウムは、小腸で吸収された後全身の組織に運ばれ、大部分が腎臓によって排泄されます。カリウム量は、腎臓での再吸収の調節によって維持されており、血中のカリウム濃度は3.6~5.0mEq/Lに保たれています。

 カリウムは、ナトリウムとともに、細胞の浸透圧を維持しているほか、酸・塩基平衡の維持、神経刺激の伝達、心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節などの働きをしています。また、カリウムは腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制して、尿中への排泄を促進するため、血圧を下げる効果があります。

カリウムの1日の摂取基準量1)2)
 日本人の食事摂取基準(2020年版)では、体内のカリウム平衡を維持するために適正と考えられる値を目安量として設定しています。18歳以上男性では1日2,500㎎、女性では2,000㎎です。また、生活習慣病の予防を目的とした1日当たりの摂取量の目標量として、18歳以上の男性では3,000㎎、18歳以上の女性では2,600㎎と設定されています(表1)。また、世界保健機構(WHO)が2012年に提案した高血圧予防のために望ましい摂取量は成人で1日に3,510㎎とされています。

 また、腎機能が正常であり、サプリメントなどを使用していない場合は、通常の食事で過剰症になるリスクは低いと考えられるため、耐容上限量は設定されていません。

 令和元年国民健康・栄養調査結果におけるカリウムの1日の摂取量は平均で2,299.4㎎でした。食品群別の摂取量をみると野菜類からの摂取が最も多く、次いで肉類、乳類、果実類、魚介類でした。

カリウムが不足するとどうなるか1)3)
 カリウムは動物性食品や植物性食品に豊富に含まれているので、通常の食事ではほとんど欠乏症はみられません。しかし、激しい嘔吐や下痢の場合、利尿降圧剤の長期使用の場合などでは、カリウムの排泄量が増し欠乏することがあります。カリウム欠乏の主な症状は、脱力感、筋力低下、食欲不振、骨格筋の麻痺などです。

カリウムの過剰摂取の影響
 カリウムは多くの食品に含まれていますがが、腎機能が正常であり、特にカリウムサプリメントなどを使用しない限りは、過剰摂取になる危険性は低いと思われます。そのため、日本人の食事摂取基準(2020年版)において耐容上限量は設定されておりません。

 しかし、腎臓の機能が低下している場合はカリウムの過剰摂取に注意が必要です。カリウムは大部分が尿中に排泄されますが、腎不全などで腎機能が低下するとカリウムがうまく排泄されなくなり、高カリウム血症になります。高カリウム血症になると、筋収縮が調節できなくなり、四肢のしびれ、心電図異常などの症状が現れ、重篤な場合は心停止を起こすこともあります。腎機能は加齢により衰えてくるため、腎臓疾患は高齢者に多く見られます。腎機能の低下により人工透析を受けている人の割合は、60~74歳までが全体の透析患者の39%、75歳以上が40%近くを占めています4)。腎臓に障害がある場合は、医師からカリウムの摂取量を制限される場合があります。

カリウムを多く含む食品4)
 カリウムは、藻類、果実類、いも及びでん粉類、豆類、肉類、魚介類、野菜類などに多く含まれます。生鮮食品に多く、加工や精製が進むと含量は減少します。

 カリウムは水溶性で、煮たりゆでたりすると水に溶け出します。生野菜サラダで摂ったり、生の果物でとったりすれば、効率よく摂取することができます。

 カリウムはナトリウムの排泄効果があるので、みそ汁の汁物で食塩(塩化ナトリウム)含量が気になる場合は、カリウムを多く含む野菜などをたっぷり具として入れるとよいでしょう。