常に前を見る

他人が失敗したときに、「なぜ失敗したんだ?」などと詰め寄る行為は、多くの場合において良い結果をもたらさない。いくら1つの失敗を責めたところで、過去はもう変えることができないのだから。

責めつづけられる本人は、「変えられない」過去について深く悩んでしまうかもしれない。そうなると、精神的に追い詰められることにもなる。

過去を叱責する人は、その理由として「失敗を繰り返さないように」と主張する。しかし、本当にそう思うのであれば、過去だけに焦点をあて、人を執拗に責めるべきではない。回答のしようがない質問で詰め寄ることは、教育効果を考えたものではなく、自分の腹いせにすぎないこともある。それは、立場を利用した悪質なマウンティングではないか。

本当に相手のことを思うのであれば、過去ではなく、もっと未来に目を向けるべきだ。もう変えられない過去を責めるのではなく、「次はどうするのか?」という話をするのだ。過去を非難することはとても簡単だ。なぜなら、具体的に見えやすいから。

しかし、未来のことを考えるのは、より抽象的な思考が必要になるので難しい。だから、多くの人は「過去に着目し、それを非難する」ことに終始するのだ。しかしそうではなく、未来のことを一緒に考えるスタンスが、相手を勇気づけ、より理想的な成長をうながす。

 

自分自身へも同じ考え方をする
気をつけておくべきこと。それは、この「過去を責める」行為は、他人に対してのみならず自分に対してもやってしまうということ。誰しも、過去を悔やんだり嘆いたりしても、それがもう変えられないことは十分に理解しているはずだ。しかし、過去を振り返るほうが具体的で簡単だ。

失敗してしまった瞬間のイメージも、まだ鮮明に残っている。だから、もう考えても仕方がないことを、繰り返し繰り返し思い出してしまうのだ。それが行きすぎると、自分の次の行動にも悪い影響を及ぼす。また新たな困難に出合ったとき、前回の失敗を思い出し、積極的な行動を取れなくなってしまうのだ。

困難を乗り越えようという勇気が出ず、無難で、保守的な姿勢に終始してしまう。変えることのできない過去の失敗の呪縛のせいで、自分で自分の可能性を摘み取ってしまうのだ。

過去の失敗を繰り返し思い出すというネガティブな思考のループにはまってしまうと、自分で自分の心を傷つけることになる。ここで覚えておく大事なことは、「失敗した事実は過去の1回だけ」ということ。

しかし、何度もそれを繰り返して思い出すことにより、たった1回の失敗が、何倍ものダメージとなって自分に襲いかかってくる。やめればいいのに、自分で自分を苦しめる行動を取ってしまうのだ。そのとき戦っているのは、過去の失敗そのものではなく、自分で増幅させた「幻のイメージ」にすぎない。

 

未来を向くことの大切さ
過去を思い出すことが、問題の解決になるわけではない。次のアクション、そして未来を考えることこそが、結局は過去に受けた傷をいやすことになるのだ。

そしてそのためには、過去の「原因」ベースで考えるのではなく、未来の「目標」という観点に頭を切り替えることが大切。「どうしてあんなことをやったのか」と悔やむのではなく、自分が実現したいことに向かって、どうやったらそこに近づけるかを考えるのだ。

過去の失敗の原因探しというマインドから、未来の目的達成のための新しい行動へと頭を切り替えると、大事なのは過去ではなく、未来のほうだと思えるようになる。このパラダイムの転換はとても大切だ。日常の中で、ふと過去の手痛い失敗を思い出してしまう瞬間というのはある。しかし、そこからしつこい後悔の念にとらわれそうになったら、常に、「未来」を強烈にイメージし、これからの行動へと頭を切り替える努力をすることだ。

そうでなければ、人生の貴重な時間を浪費してしまうことになる。自分に与えられた時間は、過去を振り返るためにあるのではない。時間は、未来のために使うべきだ。

 

 

この記事は、アースメディア代表 松本 淳 著 『リクルートに会社を売った男が教える仕事で伸びる50のルール』(フォレスト出版)からの一部抜粋です。