人を動かす言葉をきちんと考えよう

人に動いてもらおうと思ったら、「どうやって伝えよう?」ときちんと考えることが大切。

自分の要求だけをダイレクトに伝えても、人は思った通りには動いてくれない。あたり前のようにも思えるけれど、この大切な姿勢を、多くの人が意識できていないように思う。

人が動くかどうかは、多くの場合、その人の感情が決めること。状況によっては、一方的な押しつけや命令によって動くこともあるかもしれない。

しかしその場合でも、「無理やり動かされた」と感じたのであれば、見えないところで手を抜く可能性もあるし、強要した相手に恨みさえ抱くかもしれない。

そんなやり方では、誰も幸せにはならない。これはたとえ、会社の社長と、その従業員という関係であってもそうだろう。

人と議論したり、説得しようとするときも、単に自分の主張する「正論」をぶつけることは有効ではない。

正論というのは、とても怖い。こうあるべきだと相手に正論を浴びせかけても、そもそも相手はまったく違う価値観を持っているかもしれないのだ。

もしくは、意見の正しさ自体は認めざるを得なくても、その押しつけに反感を持ってしまうこともある。人にはそれぞれの事情があり、バランスを取りながらなんとかやっているのに、「これが正しい」と断言されてもなかなか素直に聞けないものだ。

 

「正論」 だけではコミュニティ運営は成り立たない
「正論」の問題は、コミュニティ運営のときなどにわかりやすく表れる。

企業経営だと、お金というわかりやすい共通の軸がある。

しかしコミュニティの場合、参加者の思いや価値観は広範囲に渡る。だから運営メンバーは、できるだけ多くの人が満足できるよう、折れるところは折れ、うまく調整し、なんとか全員がうまくやっていける努力をするものだ。

もしコミュニティに「共通のビジョン」がある場合は、それが運営上の基礎になるだろう。しかし、多様な人がいる中で、ビジョンに沿った動きだけではうまくいかないこともある。

しかしそんなとき、「それはビジョンと違う。運営は反省すべきだ!」などと声高に主張するメンバーがいたとすればどうだろう?

声を上げたそのメンバーは、正義を代表しているつもりだろう。「ビジョンは絶対であり、それに従わない運営メンバーは間違っている」との信念からの非難だ。

しかし、全方位に気をつかいながら、懸命にコミュニティをまとめる運営メンバーにはその非難はどのように映るだろうか?

「正しい」指摘をされたからといって、悔い改めて行動を変えようとするだろうか?

正論を主張したメンバーは、運営の思いなど考慮しようとせず、単に正論を通そうとしているだけだ。これは、人に動いてもらい、課題を根本的に解決しようとする姿勢ではない。

本当に問題を解決しようと思うのであれば、相手の立場も尊重しつつ、お互いに理解し合えるような対話をすべきだ。

人は、自分が正しいと思って生きている。だから突然、人から「あなたは間違っているからこうすべきだ」と言われても、急に考えを改めるようなことはしないのだ。

 

人に動いてもらうには 「共感」 こそ大切
だから、人に動いてもらうためには、「いきなり正論をぶつける」という行動とは正反対のアプローチをしなければならない。

まず、「正しい/正しくない」の議論はいったん脇に置いておく。いきなり自説を主張することも控える。まずは相手の話を聞き、事情を理解し、課題を一緒に考えようという姿勢を見せるのだ。

できるだけその人の立場になってみて、その人が心から動きたくなるような言い方を考える。

そのときに必要なのは、「正義」ではなく「共感」だ。正しさではなく、相手の感情に訴えかけるのだ。

そしてこれは、仕事においても極めて重要。ビジネスも結局は人が動かすもので、そして、人は感情で動くものだから。

このことがわかっていない人は、本当に人に動いてもらうことができない。常に相手の立場を思いやり、共感する力を磨くことは、 仕事においても欠かすことのできない大切なスキルであり、姿勢なのだ。

 

 

この記事は、アースメディア代表 松本 淳 著 『リクルートに会社を売った男が教える仕事で伸びる50のルール』(フォレスト出版)からの一部抜粋です。