人を動かすには?

人を動かすには、自分だけの 「ストーリー」が大切
 
 
これだけモノやサービスがあふれる時代、情報もあちこちにあふれている。

もしも人を動かしたいと思うのであれば、単に機能、便利さ、利益だけを訴えてもダメだ。本気で人に動いてもらうために大切なのは、自分自身が「ストーリー」を持ち、そしてそれをきちんと相手に伝えられること。

その相手が、目の前の1人であろうと、チーム全体であろうと、もっと大きな「社会」が対象であっても同じだ。

なぜなら、これからの時代においては「共感」が重要なキーワードになるからだ。

共感して、人は初めて自分から動こうとする。そのために大切なのが、心を動かされるようなストーリーだ。

語られたストーリーによって、人は深く共感し、自分から動きたいと思うようになる。そういった、人々の「本気の行動」をどれだけ起こせるか。

それが、これからの仕事の成果を大きく左右するようになる。

それでは、人を動かすことのできるストーリーとは、いったいどういうものだろうか?

嘘っぽい話、押しつけがましいものではむしろ逆効果になってしまう。それは、聞き手の心に素直に響き、「応援したい」と思ってもらえるようなものでなければならない。自分の存在が認識され、そして人とのつながりが作られる。そんなストーリーの特徴を考えてみよう。

 

押しつけではなく、本当に相手に響くもの
ストーリーは、自分が語りたいことを一方的に押しつけるようなものでは意味がない。

まず、「そのストーリーを伝えたい人はどういう人なのか?」「誰に向けて語りかければいいのか?」を明確にすること。

そして、その相手と会話をするように、気持ちを確かめながら自分のストーリーを伝える意識を持つことが大切。

そのためには、相手の関心のあること、不安に思っていることを知ろうとする姿勢が必要だ。こちらが語る前に、まずは相手の話を聞くというつもりで。ストーリーを語ることは、一方的なコミュニケーションではなく、あくまで双方向のコミュニケーションだ。

「相互理解」を強く意識することによって、ひとりよがりではない、相手に本当に響くストーリーを伝えることができる。

 

謙虚で、人間味があるもの
人に伝えるストーリーといっても、「完成された、美しい物語」である必要はない。あまりにドラマチックで、あまりに完璧なストーリーを聞いたところで「それは本当なの?」と白けさせてしまうのがオチだ。

そうではなく、等身大の自分を、ありのままに見せられるものであったほうがいい。

たとえば、人は普通、自分の「失敗談」はあまり語りたくないもの。なぜなら、少しでも他人に良く見てもらいたい、という欲求があるからだ。

しかし、人が本当に聞きたいのは、他者の成功談や自慢話ではなく、むしろ失敗した話のほうだったりする。自分の失敗を話せる人は真に謙虚な姿勢を持っているとわかるから、好感も持てる。これからの成長の可能性を感じさせ、今後にもさらに期待したくなるのだ。

自分が失敗した話、そして謙虚な言葉は、ストーリーに信頼性を持たせる。いつも自分が正しいと言うつもりなどなく、新しいことを学び、必要であれば方向転換もする

— そういう姿勢が相手に伝わるからだ。人間味のある、謙虚なストーリーにこそ、人は本当に動かされるものだ。

 

聞くと応援したくなるもの
また、ストーリーは語り手1人で完結するものではなく、「聞き手をうまく巻き込む」ものであったほうがいい。どれだけすばらしい物語だったとしても、それがもし相手にまったく関係のないものだとしたら、「感動しました。以上」で終わってしまう。

そうではなく、「自分も動きたくなった」「自分には何ができるのか?」と思ってもらえるほうがいい。

SNS時代の物語とは、1人で完結するものではなく、「聞き手と一緒に作り上げる」ものである。相手に、「自分もそのストーリーに参加したい」という強い気持ちを起こさせることが、その次の行動や、決断につながるのだ。

良いストーリーを語るためには、多くの練習の積み重ねが必要。しかし、自分だけの良いストーリーを語ることができれば、関心を持ってくれる人が増え、それが自分にとっての大きな力となる。

 

 

この記事は、アースメディア代表 松本 淳 著 『リクルートに会社を売った男が教える仕事で伸びる50のルール』(フォレスト出版)からの一部抜粋です。