弱みは克服しようとせず、 ほかの人に補ってもらう

多くの人は、「自分の弱みを克服しなければならない」という思いを抱えながら生きている。

自分の得意とするところではなく、弱いところ、どうしてもそっちのほうに目がいってしまう。そしてその「弱み」が大きなコンプレックスとなり、自分に自信が持てなかったり、 勝負しなければいけない場面で腰が引けてしまったりする。

皆さんもこれまで、「この欠点さえなければなあ」と思い悩み、暗い気持ちになってしまったことはないだろうか? 多くの人が経験していると思う。僕自身も含めて。

しかし、「弱みを克服しなければならない」という考えは、本当に有効で、正しいのだろうか?

小学校や中学校時代、通信簿で特定の科目に低い評点がついたとき、それをなんとかしなければと思わされた過去の呪縛、そういうものに支配されてはいないだろうか?

 

「強みをより伸ばす」 という考え
学校教育の現場も今では変わりつつあるようだが、やはり昔から、「すべてのことを平均以上にできるのが理想」という考え方がこの国では支配的だ。

海外で仕事をしたとき、 そのことを身をもって痛感した。人に誇れるような強み、たとえば足が速いとか、ものすごく絵がうまいなどという素晴らしい力を持っていたとしても、国語や算数の評価が1とか2だった場合には「勉強のできない落ちこぼれ」というカテゴリーに入れられてしまう。

有名なスポーツ選手やアーティスト、起業家や研究者にも、小中学校時代にそのような「落ちこぼれ」として扱われた経験をした人は多い。

しかしその後、彼らは幸運にも、なんらかのきっかけで自分の「強み」となる優れた能力に気づき、それを伸ばすことによって世 の中に素晴らしい価値を残せる存在になった。

しかし、もし不幸にも、彼らが「徹底的に不得意なところだけを克服させられる」という環境にいたままだったとしたらどうだっただろう?

きっと、今のような素晴らしい仕事や業績を残すこともなく、単に「平均的を目指すごく普通の大人」として、社会のどこかに埋もれたままだっただろう。

人類や社会に残したその大きな価値が、ひょっとすると存在していなかったかもしれないという、とても怖い事態だ。

しかし残念ながら、実際にこういうことは、目に見えないところでものすごく多く発生している。本当はもっと特別な価値を発揮していたはずの人が、今はごくごく平凡な人としてひっそり生活しているというケースは数え切れないほどあるだろう。

あなたも、「もしかしたら、自分が何かの世界で大活躍する有名人になっていたかもしれない」という可能性を、完全に否定できるだろうか?

 

「チーム」 として考える
「弱みを克服することだけに目を向けてしまい、本当は発揮できていたはずの価値ある能力を伸ばせなかった」という大きな損失は、決して「過去を惜しむ」だけの話ではない。

自分自身の人生にあてはめると、今、これからにも同じく適用される考え方だ。

だから、今もし自分に何かの弱みがあると認識していても、それをカバーするためにムダに時間を使うのではなく、強みと認識できている部分をもっともっと伸ばす—そういう意識で生きたほうがいい。

そもそも会社組織というのは、それぞれが得意な分野を持ち寄って、チームとしての総合力で勝負すべき集合体のはずだ。もし、みんながみんな平均的な、同じような力を持っていたとすると、1つのチームとして集まる意味がない。

同質の人が同じ組織に集まる意味があったのは、高度成長時代、同じ品質の商品やサービスを、同じレベルの人びとが大量にルーティンで回す必要があったときの話だ。

大きな会社だとまだそんな考えが支配するところも多いし、また、「ジョブローテーション」を人事政策の中心に据えている場合、どうしても「すべてのことを平均的にできるべき」という考えになりやすい。

こんな、まるで「学校」みたいな会社は、まだまだたくさんある。

 

弱みは人に補ってもらえばいい
もし弱いところがあるのであれば、それをがんばって克服して「平均的な人材」を目指すのではなく、チームでお互いに補い合えばいいのだ。これは、会社のマネジメントという文脈にとどまらず、個人としてのキャリア戦略、生存戦略にもあてはまる。

自分の弱みをサポートしてくれる、頼もしい仲間をいかに増やせるか
—それがとても大切だ。

そのときに考えるべきは、自分が、「人から助けてもらえる人間かどうか?」ということ。

他人に弱みを補ってもらうため、「自分としてはどうふるまうべきか?」「何をすべきか?」、 そのことをしっかりと考えるようにしたい。

 

 

この記事は、アースメディア代表 松本 淳 著 『リクルートに会社を売った男が教える仕事で伸びる50のルール』(フォレスト出版)からの一部抜粋です。

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